231 弥三郎岳(中巨摩郡敷島町)

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弥三郎岳(羅漢寺山)は昇仙峡の覚円峰や鎧岩を抱いた1058mの山です。ロープウェイ(写真左)に乗れば10分ほどで到着しますが、お金を出すのがイヤな人は登山道からでも登れます。登り口は県道7号沿いにある金桜神社バス停(写真中央)の南、約400mの地点を西へと上っていきます(写真右)。約1.1キロは2車線の舗装路ですが、その後の約1.6キロは1車線強のダート路になります。県道7号からだと約2.7キロほど歩くと到着です。今回は県道7号から徒歩で登ってみました。ちなみにロープーウェイの乗車賃は大人1000円、子供500円です。
登山道といっても比較的穏やかな上り坂です。今回は写真を撮りながらだったので1時間20分ほどかかりましたが、健脚な人なら1時間ほどで登ってしまうでしょう。ほぼピークに達するとY字路(写真中央)になりますが真っ直ぐに進みます。標識があるので間違うことはないでしょう。Y字路を約100mほど進むと弥三郎岳の西にある「うぐいす谷」の入り口が現れます(写真右)。
入り口からは1m幅の道が南へと延びており、約40mほど奥へ進んでいくと断崖絶壁の「うぐいす谷」へと到着です(写真左)。うぐいす谷の正面には甲府盆地から武川村方面までのパノラマが雄大に広がります。ただ直下は垂直に落下しているので足下には気を付けましょう。
うぐいす谷から北へと向かうと、約2分の場所に八雲神社が建っています。八雲神社は猪狩町の氏神様で古来より夫婦和合と武運の神として祀られ、金桜神社参道の要所として道中の安全を祈した場所だそうです。同地点からはほぼ360度の眺望を得ることができ、北側には荒川ダム(能泉湖)の湖面が広がっています。
八雲神社の東側には昔ながらの茶店が出ています。なにも知らないで行くと、「え?なんでこんな山奥に茶店が」と驚くかもしれません。実は、この茶店の直ぐ裏がロープウェイの終点になっており、平日でもロープウェイで上ってきた観光客で結構な賑わいを見せています。完全に観光地化しており少し興醒めしてしまう程ですが、同地点からは富士山や甲府盆地や南アルプスといった壮大な景色が見渡せます。さて茶店からは一路、東へと進み弥三郎岳との中間地点にあるパノラマ台へと向かいます。
ここをクリックすると同地点に立っていた周辺案内板を表示します(約27k)。
パノラマ台までの道は白砂と花崗岩を削った階段が稜線に沿って続きます。道は比較的穏やかで、極度に勾配の大きくなっいるような坂は余りありません。約5分から10分ほど歩くとパノラマ台が見えてきます。
パノラマ台の看板は岩峰の上に立っています。直ぐ先は「うぐいす谷」よりも更に深い絶壁になっており思わず吸い込まれそうな気がします。しかし同地点からの眺望は素晴らしく、まさにパノラマの景色が壮大に広がります。また右手には通ってきた茶店やここまでに至る道筋がクッキリと見てとれます。
さて、ここからは更に東にある弥三郎岳へと向かいます。パノラマ台を過ぎると道の様相はガラリと変わります。白砂だった道は土質の道へと変わり、道幅も場所によっては1mと狭くなります。また勾配も少しずつ大きくなり、所々で「悪路注意」という看板が出てきます。ただ足下にさえ注意していれば危険というような道ではありませんのでそれほど心配する必要はありません。パノラマ台から約5分ほど歩くと山肌を回り込み弥三郎岳の岩峰(写真右)が見えてきます。
弥三郎岳が見え始めてから1分から2分ほど進むと道が二股に分かれます。右の道は10mほど進むと断崖となりますが弥三郎岳の直下に立つことができます。ここからの景色も絶景で富士山や甲府盆地を取り巻く山々は勿論、片山や湯村山、更には千代田湖を通して甲府市の中心部まで見通せます。
先ほどのY字路に戻って左の道を進むと、「これからいよいよスリルに満ちた登山道です。それだけに登頂・下山には充分気をつけて下さい」という、半ば冗談のような看板(写真左)が木に掛かっています。ここまでの道が余りにも平坦だっただけに、「ジョーク?」と思っていましたが、実際にここからの道は険しさを増していきます。特に数分ほど岩肌を上り、弥三郎権現の祠(写真右)から先はスリル満点です。
弥三郎権現の祠は頂上の直下に祀られています。弥三郎岳の名称ともなっている弥三郎とは酒造り名人で、寺男として羅漢寺に住んでいたそうです。武田家の祝い酒などを造り重宝がられていたそうですが大酒のみで失敗も多く、そのことを住職から諫められ一斗の酒を最後に禁酒を誓い、その夜、この頂上から天狗となり姿を消したそうです。以来ここは弥三郎岳と呼ばれるようになり、現在でも酒の神様として祀られているそうです。祠の横には高さ7、8mの岩峰が屹立しており、頂上にはその岩峰を削った階段を登っていきます。
あいにく逆光になってしまいましたが、頂上に立つと写真では表現できないほど素晴らしい景色が広がります。ただ正直に言うと怖すぎます。山頂は碁石を半分に切って伏せたような形状になっており、その先端は見えない谷底へと落ち込んでいます。一歩でも踏み出せばそのまま何百mもの谷底に滑り落ちてしまいそうな恐怖にとらわれます。
北側には荒川ダム(写真右)も見えます。しかし当日は風が強く踏ん張っていても躰が振られ、そんな絶景も殆ど目に入りませんでした。早々に、「怖えぇーーーっ」と叫びながら引き上げてきた次第です。途中で見た、「スリルに満ちた登山道です」という看板の意味が分かった気がします。